東西合同役員会・研究会(2015年6月)

開催概要

  1. 【合同研究会】13:30~14:30
    • 報告者: 野尻洋平会員(名古屋学院大学)
    • 報告論題:「個人化社会における『子供の見守り』意識の実証分析―監視社会論の視角から」
    • 報告要旨:

 2000年代以降の日本社会では「子どもの犯罪被害」に対する社会的関心が上昇し「治安悪化」言説が増大した。これを受け、政府や自治体では「子どもの安全」を確保する取り組みが活発化した。各家庭における「見守りケータイ」や「見守りサービス」の利用もそのような取り組みの一例である。

監視社会論の代表的論者であるデイヴィッド・ライアンは、監視を「データが集められる当該人物に影響を与え、その行動を統御することを目的として、個人データを収集・処理するすべての行為」として定義した。この定義によれば、子どものための「見守りケータイ」や「見守りサービス」はひとつの監視技術として捉えることができる。

では「見守りケータイ」や「見守りサービス」の社会的な浸透、すなわち監視社会化はいかなる社会構造の変化のもとで生じているか。本報告では、家族の個人化をその理論仮説として設定し、上記の監視技術の利用に対する、結婚観や育児規範などの家族変数、地域参加や居住年数などの地域変数の効果について、質問紙調査データの分析によって明らかにする。

分析の結果、「見守りケータイ」においては教育年数および世帯年収が負の効果、末子年齢が正の効果が見られたが、家族変数はいずれも関連が見られなかった。地域変数は防犯・防災に関する地域活動のみが正の効果であった。「見守りサービス」においては年齢および教育年数が負の効果、末子年齢が正の効果が見られ、家族変数は伝統的家族観のみ正の効果、地域変数は防犯・防災に関する地域活動のみが正の効果が見られた。

これらの結果は、経済的資源や文化的資源の少ない層ほど利用意向があることを示している。監視技術は、従来の育児サービスに加えて、付加的に利用されるのではなく、それらの代替物として利用されているのではないか。現代日本における監視社会化は、従来の育児サービスやサポートを享受できない層から進行するのではないかということが示唆されるのである。

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  1. 【合同役員会】14:40~17:00
    • 議題:
      1. 第51回全国大会プログラムについて
      2. 顧問の推薦について
      3. 寄附金の取扱いについて
      4. 会務報告
      5. その他